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ガスタービンの進歩

 

 ここでは1970年代初頭にガスタービン車両が挫折して以降のガスタービンの進歩を見ていきます。

ディーゼルへの挑戦

 1970年代の石油ショック以降、すべての産業で省エネが重視される時代となり、ガスタービンにとっては冬の時代となりました。 その一方で大気汚染に対する見方も厳しくなり、遅々として改善の進まないディーゼル排気に対して次第に厳しい目が向けられるようになりました。 ガソリンエンジンでは触媒や燃焼方法の改善により排気ガス浄化が大きく進歩しましたが、ディーゼルでは性能を維持しての排気ガス浄化には目処がほとんど立たない状況でした。

 このような中、ガスタービンの低汚染性に再び注目が集まるようになったのです。 ガスタービンは窒素酸化物がやや多いものの、特別な改造をしなくても排気ガスはディーゼルに対して大幅にきれいで、発がん性などとの関連で問題となる粒子状物質はほとんど出ません。 そのため、なんとかこれを航空以外の産業分野にも応用できないか期待が高まり、燃料消費量をディーゼル並みにすることが最優先課題となったのです。
 こうしてガスタービンの効率改善へいくつもの取り組みが始まりました。

 

セラミックガスタービン

 ガスタービンの効率を上げる近道は燃焼ガスの高温化です。 理論上、ディーゼル並みの効率を達成するにはタービンに吹き付ける燃焼ガスの温度を1300度以上にしなければなりません。 下の図は熱交換器つきの30kWガスタービンの効率がタービン入り口温度900℃の時と1300℃の時でどう違うか、現実的なタービンや圧縮機の効率を元に理論的に求めた図です。

縦軸が熱効率、横軸が圧縮比、実線で示された曲線が現在の一般的な熱交換器をつけたもので、左側の図のものはキャプストン社が実際に販売しているガスタービンとほぼ一致しています。 このように燃焼温度の上昇で大幅に効率が向上し、もしタービン入り口温度1300℃が実現すれば30kW級の小型ガスタービンでもディーゼル並みの効率を達成できることがわかります。  しかし、実現には厳しい壁が存在します。 いかに耐熱合金といえども連続してこれに耐えられるものは存在しません。 大型のガスタービンでは冷却機構をタービン翼内部に持たせることで金属単体の耐熱温度を超える温度で運転できるようにしていますが、小型のものでは実現困難です。 そこで注目されたのがセラミックスです。 熱には強いものの、もろい、割れやすいという欠点のため、高速回転するガスタービンへの応用は困難とされていましたが、世界で開発が続けられ、一部にはガスタービン翼として試作可能となりました。 燃料電池が夢物語であった当時、自動車業界が再びガスタービンに注目するきっかけとなったのです。 日本では通産省が音頭を取ってセラミックガスタービンの試作を行い、100kW級の自動車用と300kW級の産業用が開発されました。 タービン入り口温度は1350度、熱効率は前者が35%、後者は42%を達成、金属ガスタービンの常識を大きく超える結果を得ることができました。 
 これらのセラミックガスタービン開発プロジェクトは1999年に終了し、その技術を金属・セラミックス複合型の中型ガスタービン開発へと応用して次の段階へ進んでいますが、主要部品のセラミックス化が耐久性の問題を解決できないためか、小型ガスタービンへの本格的応用へは進んでいません。 その一方で 独立行政法人物質・材料研究機構は2003年に耐用温度1500℃のガスタービン翼用として使用可能な
窒化ケイ素セラミックス材料の開発に成功しており、ディーゼルを上回る可能性を秘めています。

 

耐熱材料の開発

 セラミックスほどの耐熱性は得られないものの、耐熱合金も着実に進歩していきました。 キハ391時代のガスタービンに使われていた耐熱合金は耐熱温度900℃程度のもので、冷却構造を持たないタービン翼の温度を高めることができず、1000馬力クラスの熱効率は20%という低さでした。

 しかし391時代から30年、耐熱温度は徐々に上昇、2000年ころには1000℃を超えるようになり、冷却翼を使用するジェットエンジンでは離陸時に限り1600℃のタービン入り口温度を許容できるものも現れ、ジェット機の燃料消費は大きく低下、機体設計の最適化とあわせて飛行効率は倍以上に改善、東京−札幌間で見た場合、1座席あたりの二酸化炭素排出量はB727が108kgであったのがB7E7では45kgまで低減されています。 そして耐熱温度1100℃が達成され、タービン入り口温度1700℃も視野に入りつつあり、中型から大型ガスタービンの領域では低速ディーゼルの効率にさえもある程度迫れる状況です。

スーパーマリンガスタービン

 実用化を視野に入れた新しいガスタービンの開発も徐々に成果を見せるようになりました。 まず内航船舶用の主機として日本で開発が進められているのがスーパーマリンガスタービン(SMGT)です。 船舶では高効率のディーゼルがほとんどを占めていますが、近年の環境問題の重視からこの分野でも排ガス規制が検討されるようになり、なんとかガスタービンを応用できないかとプロジェクトがスタートしました。 ガスタービンではやはり燃料消費量が問題で、しかも燃料に安価なA重油が使えず、運転コストが大きな障害となっていました。 そこでA重油を燃料として使用可能で高速ディーゼル並みの効率を持ち、汚染物質の排出を今のガスタービンよりさらに少なくできるガスタービンの開発が目標となったのです。 同時にガスタービンの小型軽量特性を発揮して船体形状を最適化して抵抗を低減、機関室設置の自由度を上げスペースも削減できる電気推進船がスーパーエコシップとして開発されることとなりました。 回転数変化にも対応可能とし、部分負荷での効率低下を極力減らすため再生装置(熱交換器)付2軸式ガスタービンとなり、熱効率は初期目標の38〜40%には届かなかったものの37%に迫っています。

2006年11月にはこのガスタービンを搭載した電気推進タンカー茂丸が進水、実証試験を始めています。

 

TM 1800ガスタービン

 これは船舶、陸上用の電源として応用する目的でヨーロッパで開発されたガスタービンです。 フランスのTurbomecaが開発したもので、同社によれば鉄道車両用も視野に入れているとのことです。

 設計方針は低価格高効率の実現で、構造の単純な遠心圧縮機方式の一軸式ガスタービンで、効率の向上のため熱交換器を装備、消音器もかねた構造で小型化を図っています。

燃料賞比率は210 g/kWhと直噴ディーゼルに迫り、特に部分負荷での燃料消費率悪化はディーゼルと比べるとまだ悪いものの、1990年代世代のユーロダインと比べて大幅に改善されています。 

当初から高速発電機を直結することを前提として設計され、Calnetix社が専用の永久磁石発電機を開発しており、20000RPMと高速回転のため、2000kWの発電機が845kgの重量で実現されています。




 

LV100ガスタービン

 これはアメリカ軍の地上車両の動力源として開発されたガスタービンで、現在M1戦車に搭載されているAGT1500の換装、155mm自走砲の動力として使用することを目的にしています。 M1戦車でのガスタービン使用実績から更なる燃料消費量の削減、構成部品の低減による低コスト化、一層の小型化が求められ、走行時の燃料消費量を25%以上、アイドル時の燃料消費量を50%減らしています。 現在の戦車などの駆動方式は機械式変速機を用いていますが、電気式ハイブリッド駆動への移行が積極的に研究されており、ここでもガスタービンの高速回転を生かした軽量発電セットに期待が集まっています。 このガスタービンを使用すると1立方メートルの体積と1.2トンの重量で1000kWの発電セットを構成できるとされており、システム全体の小型化が可能で、次世代の動力源としても注目されています。

 LV100は2002年から試験が開始され、2004年から生産開始の予定でしたが、軍の予算削減で見送りとなり、今のところM1戦車への搭載も実現しておらず、量産の目処は立っていません。

 

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