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Jirnov Vortex Engine

 

新しいガスタービン

 これはロシア人科学者(Alexei Jirnov氏)が同僚とともに1998年に米国で特許を取得したエンジンで、ガスタービンと同様圧縮機・熱交換器・燃焼室・タービンを持ちますが、圧縮機とタービンの部分に通常の遠心式あるいは軸流式タービンと異なり、sliding vane(滑動翼)式圧縮機・膨張機を使用し、圧縮過程で水の気化熱を利用して等温圧縮を行う修正ブレイトンサイクルで動作している点に特徴があります。

基本構造

 滑動翼式の特徴は機密性が高いため小型でも損失が少ない点です。膨張機の概念を示したのが次の図で、回転に伴い板が滑って移動して外筒との間の機密性を保ちながら空間を徐々に拡大して気体を膨張させる構造となっています。

 

実際に製作されたものが下の写真です。

次の写真は圧縮機で、上記の膨張機を逆に作用させた構造となっています。また、圧縮機には効率を上げるもうひとつの構造を持っています。それは圧縮中に水噴射を行い、気化熱で圧縮による温度上昇を減らし、ほぼ等温圧縮を可能としています。

水注入は潤滑油注入のような効果も持ち、圧縮空気の漏れを減らし滑動翼の過熱も防ぎます。液体で残った水は回収可能で、チェンサイクルガスタービンのように大量の水を消費することはないとしています。これによって圧縮機効率が大きく向上し、エンジン全体の効率向上に寄与しています。通常のガスタービンの場合高速回転による翼損傷の恐れがあり、圧縮機に液体の水をそのまま注入することはできませんが、こちらは回転数が低く翼構造も異なるため可能となっています。

期待される性能

 ピストンエンジンとタービンエンジン両者の長所を取り入れ、両者の欠点を取り除いたとGeneral Vortex Energy社は主張し、下の図のような性能予測を発表しています。

しかもこの性能は数十kWクラスから実現できるとしており、30kWのプロトタイプが燃焼温度705℃で熱効率54%程度を達成可能とし、セラミックス材料を利用した燃焼機と膨張機を使って900〜1000℃で運転した場合は70%に達するとしています。もしこれが実現できれば地球温暖化が深刻化するこれからにとってまさに夢のエンジンとなるはずです。

 ガスタービンと同様連続燃焼のため排気ガスはクリーンでさらに燃焼温度が内燃機関としては低いため、高温燃焼に向かうガスタービンで問題となる窒素酸化物排出が少ないという特徴を持ちます。また、高温燃焼のガスタービンではタービン翼を腐食させるため使用できないような低質油も燃料として使えるという特徴もあります。燃焼温度が低いと高価な耐熱材料に依存する率が低く、結果的に低価格で量産可能としています。

 トルク特性は無過給ディーゼルに似てフラットなトルクを発生し、回転数は1800〜3600RPM程度と低く、減速機構が簡略化できる利点があります。ディーゼルのような高圧作動はなく連続燃焼低速回転のため騒音が低いのも利点です。
 ガスタービンと同様小型軽量化が可能ですが、回転数がディーゼル並となりガスタービンで流行しつつある高速回転発電機を使った軽量発電セットを組むには不利な面もあるようです。

問題点は?

 同社が発表している資料を見る限り、量産のための資金と提携企業がないこと以外に障害は無いかのように見えます。しかし、滑動翼を動作させる機構が複雑で摩擦を伴い、同社の主張に反して軸受け以外に接触構造を持たないガスタービンにピストンエンジンの持つ摩擦という大きな欠点を持ち込んだ感が否めない面があり、主張どおりの長寿命低維持費が実現できるかどうか疑問です。

 2003年にアメリカ海軍から補助金を交付され30kW機の試作を行い、2005年に125kWでの本格試験へ1億円以上の追加を受け開発を開始していますが、今のところそれ以降の新しい動きが無く、開発が期待通りに進んでいない可能性もあります。

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