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電気式ガスタービン飛行機

 

ターボファン

 航空機電動化の波は大型定置用あるいは非常用発電以外注目度が低くなっていたガスタービンに再び注目を集める可能性を秘めています。電気で飛ぶには電池か発電機がいるわけで、軽量性命の航空業界ではALPSプロジェクトで紹介した高速発電機直結ガスタービン駆動が再び注目されようとしています。
 ジェットエンジンと言っても旅客機などに使われるものは筒の中で扇風機を回しているのと同じで、ジェットと言ってもターボジェットと異なり吹き出しているものはほとんど普通の空気です。戦闘機と違い、速度も遅く燃費重視の旅客機ではガスタービンで扇風機を回すいわばプロペラ機です。燃費を良くし騒音を抑えるには大きな扇風機をゆっくり回して飛ぶほうがよいので徐々にこの筒が大きくなり、大型ガスタービンの低速回転をさらに減速歯車で減速して回すものもあります。しかし重量及び空気抵抗とのバランスからそれも限界となり、さらなる燃費向上策を求めている状態でした。
 別の方法として機体に沿って進む空気流をうまく使うやり方があります。小型の扇風機を機体に沿って多数配置するのです。しかし小型ガスタービンを多数搭載するとなるとメインテナンスが大変です。しかもガスタービンは小型ほど燃費が悪化するためこの方法のメリットを活かせません。

E-THRUST

そこで生まれたのがこのアイディアです。

機体には高速発電機をガスタービンに直結した軽量発電システムを搭載、翼や胴体に小型の電動ファンを多数配置し飛行抵抗を下げて推進効率を挙げるのです。電動ファンならメインテナンスも容易で電動機は小型でも高効率を維持します。
 この方式の問題点は発電機と電動機、複数の長い電力線が従来の機体に追加されることによる重量増です。軽量性が命の航空機にとっては致命的な欠点ともなりますが、前ページで紹介した電動機の進歩により現実味を帯びてきました。総合効率ではいずれこの方式のほうが高効率となるとされ、盛んに開発されています。

そして将来のバッテリーの高性能化を見越し、ロールスロイス、エアバス、シーメンスの3社は共同で”電気式ガスタービンハイブリッド飛行機”のテストを2020年に行う予定です。これはガスタービン発電機、バッテリー、電動ファンの基礎的なデータを取るのが目的で、下の図のように中型ジェット旅客機の4発のターボファンのうち1つを電動ファンに置き換え、飛行試験を行う予定です。

2000kWのガスタービン発電機で2000kWの電動機が駆動される構成で、バッテリー出力も同等になっています。ガスタービンはAE 2100でC130輸送機に搭載されるもので、本来は連続定格5000馬力近い出力があるものです。より高出力の発電機駆動を見越しての選定か、離陸時の短時間高負荷のために電動機と発電機の過負荷耐性を生かして過負荷運転するためのガスタービン出力かもしれません。
このシステム、世が世ならガスタービン機関車にとっても大変魅力的なものになっていたでしょう。

電気式ガスタービンヘリ

 一方でより小型の分野でも開発が進んでいます。空飛ぶ車と言う用語がよく使われるようになり、まさに今の電動ドローンを車並みに大きくして人を運べるようにしたシステムが多数のベンチャー企業を中心に開発されています。車の延長ですのでハイブリッドの場合はガソリンエンジンとなります。ガスタービンを使う場合はこれより少し大きな機体で長距離飛行する領域となります。
2019年3月、ロールスロイスは500kWから1000kWクラスのヘリ用途を見込んで地上試験を実施、数年内の実用化を目指しています。

これらの技術が普及し低価格化した場合、ジェットトレイン開発当時一部で注目された非電化高性能列車に再び電気式ガスタービンハイブリッドシステムが使われるのではと期待してしまいます。

 さらにより有力な地上での応用先として、1000kW前後の動力を必要とする戦闘車両です。M1戦車のページでも書きましたが、アメリカ陸軍が次世代ガスタービンの試作までこぎつけながら採用を断念、それでもディーゼルへの切り替えは否定、いつまでもAGT1500を使い続けています。これはやはり次期主力戦車の動力としてガスタービンハイブリッドシステムを計画しているのではと再び考えてしまいます。

進まない高効率化

 やはり燃費がガスタービンに常に付きまとう問題です。それでも耐熱材料の進歩で大型航空用では昨年IHIがXFP-9というタービン入口温度1800℃という世界最高水準の戦闘機用試作機を発表し注目されました。また、大型発電用では1700℃級の実用化へと進もうとしています。
 しかし冷却翼構造があまり使えない小型では耐熱温度1400℃のタービン翼すら実用化の目処が立っていません。5000馬力クラスでも熱効率30数%、戦闘ヘリなどに使われる1500馬力クラスでは30%がやっとという時代が長く続いたままです。
 戦闘ヘリ用では2025年をめどに熱効率36%以上の3000馬力級が開発中で、セラミック複合材を使用して高温燃焼を実現しようとしています。軍用では巨額の開発費が投じられますが民生用はそうも行きません。20世紀末に注目されたコジェネレーションシステムも発電効率の低さからガスエンジンに破れ影が薄くなってしまいました。小型のガスタービンが復活するには発電効率40%以上が必要と言われ、1400℃耐熱翼のめどが立たない現状では未だに夢物語となっています。

 

 

 

 

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