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長所・短所 |
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特徴は? ガスタービンもディーゼルやガソリンエンジンと同じ内燃エンジンの部類ですが、その基本構造はこれまで述べてきたように大きく異なっています。 一方エンジンの世界では大量の空気が連続的に流れるというシステムはそのまま長所ともなり短所ともなっている面もあります。
これを見ると馬力あたりの重さが100g程度のものがごろごろしています。2㎥に満たない体積で500kgほどの重さのエンジンが連続して5000馬力も出せるなどちょっと想像しにくい世界です。最新のディーゼルでもまさに大型トラックサイズ、10トンもの重量があっても4000馬力に満たないのです。ガソリンエンジンでも大型RV車サイズを越えてしまうでしょう。最新の新幹線用の誘導電動機でさえも300kW発生するのに300kg以上もあるのです。空からガソリンエンジンがあっという間に追い出されたのも無理のない話です。最近の超高速回転の交流モーターなどはガスタービンに並ぶものもありますが、少なくとも自分で火を炊いてエネルギーを発生する動力装置で、まともなものでは、ガスタービンのそばにもよれないでしょう。もしあるのならとっくに飛行機に使われているはずです。 左の図は25000kW、つまり33500馬力に達するエンジンの例です。右下に人が立っていますが、大きさを比べてもいかに小型かわかるでしょう。この出力は規定の環境での連続定格で、瞬間最大出力ではないのです。出力を一桁間違えたのではと思う人のためにもう一度確認しておきます。二千五百ではありません、二万五千です。500系新幹線電車一編成よりはるかに強力なのです。ほかのエンジンだったら大きな建物ほどの大きさが必要です。 ジャンボジェットのエンジンがこれと同じくらいです。ジャンボのエンジンというと大きいと思うかもしれませんが、あれは大きなダクトの中に一種のプロペラであるファンをいっしょに組み込んでいるから大きく見えるのです。ファンを回しているエンジンはあの大きなダクトの中の芯のような小さなものです。 次の特徴は燃えるものなら何でも燃料になるという点です。何でもといっても低質の重油など適さないものもありますが、基本的には液体か気体の燃料なら大丈夫です。ジェット燃料というとすごい燃料のように聞こえますが、灯油とほぼ同じ成分です。小型のガスタービンはこれを使いますし、軽油やガソリンはもちろん、アルコールや天然ガス、水素までエンジンをほとんど改造することなく利用できます。特に代替燃料として有望視されている天然ガス利用ではすでに長い実績を持ち、タービン翼の汚染がないためメインテナンスが簡略化される利点も持っています。最近注目されているバイオエタノールもガソリンなどの添加なしに直接使用することが可能です。これらは石油がなくなっても生物資源や太陽から作れるものです。さらにガス化により石炭や廃棄物とされていたような低質油までも燃料として使われようとしています。
低速回転で大きな回転力を発生するのも特徴です。この性質は車両用で重要な特徴のため別の項で詳しく説明いたします。最近では高効率軽量の電気式動力変換方式が実用化され、この利点は薄れつつありますが、構造の単純さと軽量性を要求される領域では有利な特性となります。 騒音と振動が小さいのも長所です。消音器らしいものをほとんどつけていないジェット機やヘリの騒音を連想しますので騒音が小さいというと意外に思うでしょうが、ガスタービンの騒音の主体は比較的消音の容易な圧縮機、タービン翼からの高周波音で、消音の難しい低周波音は燃焼器から出る程度で比較的少なく、低周波音と低周波振動が主体のディーゼルと比べるとずっと防音しやすいのです。都市部など騒音、振動が問題となるような場所でも設置条件はディーゼルよりかなり緩く、高価なガスタービン発電セットを設置してもメリットが出る場合があるほどです。実際に体験できるのはジェットフォイルとディーゼル駆動の高速船を乗り比べることです。ガスタービン船の静かさに驚くでしょう。もちろんディーゼル船独特の振動はまったくありません。船外騒音も最大出力時で90〜100dB程度とされており、8000馬力近いガスタービンが回っている割にはよく消音されており、キハ391の起動時とは比較にならない静かさです。 そのほか、潤滑油の消費が極端に少なく、ディーゼルの数十分の一しか必要としません。また、エンジンを冷やすしくみが非常に単純です。ディーゼル車両のような大げさなラジエータは不要で、ちょっとした換気扇くらいですみます。面白いのは寒いほどエンジンの性能がよくなること。しかも少々の寒さなら一発始動であっという間に最大出力に持っていけます。ガソリンやディーゼルのように長いことガラガラアイドリングしてフォーミングアップする必要もありません。排気ガスがきれいなのも長所です。気動車の発車というと、もうもうと白煙や黒煙を吹き上げて独特の香りが漂い、あたりに霞がかかるのが常ですが、ガスタービンではこんなことはありません。旅客機のエンジンがもしディーゼルだったら空港の視界は利かなくなり公害問題は大変なことになるでしょう。何しろ離陸時には十万馬力以上でふかしているわけですから。 車両用にはあまり関係はありませんが、1機当たりの出力が非常に大きくできる点も長所です。 船用の低速ディーゼルなら1機10万馬力近いものがありますが、非常に大型になります。ある程度小型化できる高速ディーゼルでは2000馬力台、中速ディーゼルでも20000馬力が限界で、大出力の発電所や高速艦艇には対応できません。その点ガスタービンはこの制約が少なく、航空転用のLM6000で1機5万馬力を優に超え、これを元に開発した発電用のLMS100では130万馬力を超えています。 欠点は?一番の問題は燃料を大食いすることです。さらに困るのがアイドル運転状態でも結構な量の燃料を消費することです。これらがガスタービンの普及を阻む最大の要因ですのでこれも別項で詳しく解説いたします。 エンジン価格が高価な点も問題です。過給器の製造技術を応用して量産されているマイクロガスタービンなどを除くとガスタービンはディーゼルよりかなり高価で、5000馬力級で3〜4倍の価格となります。つまりガスタービン機関車を作った場合、エンジンだけでほぼディーゼル機関車全体の価格となることを意味しています。 高速回転のため用途によっては複雑で重いギアボックスを必要とします。毎分1万〜2万回転はざらで、特に小型のものでは10万回転前後で回るため、スクリューやプロペラ、車輪のような低速回転のものを直接回すには不向きです。しかし、トルク特性上、液体変速機を省略できる場合もあり、伝達機構全体ではディーゼルよりかなり軽量化できる場合があります。さらに近年は非常に小型化できる高速回転発電機を直結することでこの高速回転という欠点が逆に利点になる場面も出ています。 処理する空気量が多いため吸気口や煙突を広くする必要があります。そのため消音器が大きくなり、給排気ダクトが客室や貨物スペースに影響することもありえます。 圧縮機の羽根が汚れると効率が落ちるため、ごみのないきれいな空気を吸わせないといけません。ゴミの少ないところを飛ぶ飛行機では問題ありませんが、浮遊微塵が多い地上や塩分を含む水滴が浮遊する海上では問題となります。 出力軸が停止か超低速回転の状態でフルにするとものすごい騒音を発生するため鉄道車両などで直結駆動方式を採用すると駅発車時などに騒音問題が生じます。 また、ガスタービンはほぼ連続して一定の出力を発生する分野で主に利用されてきたということもあり、鉄道のように頻繁にアイドルから最大まで急激に出力が変化するような分野での利用実績が乏しいという問題もあります。ディーゼルにとってもこれは過酷で、イギリスで長い歴史のある高速ディーゼル列車インターシティ125では出力重量比が低いためどうしてもエンジン負荷が高くなり、エンジン保守には手間がかかっているようです。最近徐々に高出力のエンジンに換装されていますが、発電機や駆動用電動機は変更無く、エンジンは最大定格では使用せずレートダウンして従来どおりの出力に設定して使用して余裕を持たせ、保守の低減に向けています。この傾向は日本の気動車でも見られます。最近の気動車は1両1000馬力に近づき、在来線用としては十分な出力となったため、通常の運転ではエンジン負荷が以前と比べ軽くできるようになり故障の低減に寄与しています。 |