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Multi-Pressure Gas Turbine

 

久々の車両用ガスタービン

 2006年11月、Capstone社はAgile Turbine Technology社との提携を発表、その内容に車両用ガスタービンの文字が躍っていました。キャプストン社のマイクロガスタービンはトラックやバスなどのハイブリッド車に一部利用されていますが数的にはわずかなもので、効率などまだまだ問題の多い状況です。そこでAgile Turbine Technology社が開発したMulti-Pressure Gas Turbineの技術に注目したのです。

基本構造

 これは2003年に米国で特許を取得したもので、基本的には高低圧圧縮機を持つインタークーラー付3軸式再生サイクルのガスタービンで、AGT1500にインタークーラーと再熱燃焼器を追加した構造ですが、3種類の動作モードを切り替えながら運転できる構造を持っています。作動ガス流量の減少する部分負荷時にも高効率を保持し、アクセル操作に敏感に反応できる応答性をガスタービンに持たせ、車両用として利用可能にする技術です。

 まず高負荷運転状態は通常のガスタービンと同じで、以下のような動作をします。下の図の左下の低圧圧縮機で圧縮され温度が上がった空気はインタークーラー(IC)に入り冷却され、次の高圧圧縮機の負担を減らします。高圧圧縮機に送られた空気はさらに圧縮され、再び温度が上昇します。そして熱交換器(Recup)に送られ、ここで排気ガスの熱をリサイクルしさらに過熱されます。そして燃焼室に送られ燃料と混ざって燃焼し、高圧タービンを駆動、これは高圧圧縮機の動力となります。高圧タービンを駆動してエネルギーの減った燃焼ガスにはまだ大量の酸素が残っていますので、次の再加熱用の燃焼室で燃焼されエネルギーを取り戻し、低圧タービンを回して低圧圧縮機を駆動します。

そして残りのエネルギーを使って出力タービンを駆動、最後に排気ガスは熱交換器に送られ熱エネルギーが回収されます。再加熱で出力は増大しますが燃料消費量も増えるように見えます。しかしこの熱は下流の熱交換器で回収され、上流の燃焼室に入る空気温度が上昇するためここでの燃料消費が減るため、結果的には増大した出力分以上に燃料消費は悪化しません。そのため、よりコンパクトで高出力を効率よく発生可能となります。この方式の熱効率はタービン入り口温度980℃で43%に達し、現在の材料技術で実現可能としています。

減圧運転

 では次の図のような構成にするとどうなるでしょうか。

 この図のガスの流れをよく見るとなんと燃焼室に送られる空気は圧縮機を通っていません。外気から直接熱交換器に入り、排気ガスはなんと熱交換器を通過後インタークーラーで冷却され、圧縮機を通って大気中へ排出されています。インタークーラーと圧縮機により熱交換器の出口は大気圧以下に減圧される、このような構成のガスタービンをsubatmospheric gas turbine と呼びます。このようなものがエンジンとして実際に成り立つか感覚的に不思議ですが、1970年代に12馬力のものが複数試作されており、わずかのガス流量でごく小さい出力であれば効率よく発生させることができるらしいのです。

Multi-Pressure Gas Turbine

 次の図は上記の3軸式ガスタービンにインタークーラーを1つ追加した上でバルブを設け、3段階の運転モードを切り替えられるようにしたものです。太い矢印がガスの流れる方向を切り替えるバルブの位置とガスの流れる方向を示しています。

Positive Pressure

この図では”In”から空気が流れ、通常通りの順序で処理され”Out”へ流れて排出されます。

 一方バルブを次の図のように切り替えるとどうなるでしょうか。ガスの流れは低圧圧縮機を通らずインタークーラーを介して直接高圧圧縮機へ入り、それ以降は通常通り流れて燃焼ガスとなり仕事をした後熱交換器へ進み廃熱が回収されます。

Transatmosheric

そして新たに設けられたインタークーラーを通ってさらに冷却され、低圧圧縮機に吸引され大気中に排気されます。

 次の図のように接続された場合、完全に上の減圧運転の項で説明した構成となり

Subatmosheric

大気は熱交換器入り口へ直接吸い込まれることとなります。

 各圧縮機の圧力比を3.15とした場合、それぞれの構成で発生する最高出力は下の表のようになり、 その出力で最大効率を発生するようになります。

車両のアイドリングから巡航、登板や全力加速それぞれの状況に応じてこれらのモードを切り替えることで効率をあまり落とすことなく対応できるようになり、従来のガスタービンの持つ致命的な欠点を解消しようとするものです。

ICR 225 車両用エンジン

 上記の理論を元にAgile Turbine Technology社は225kWのハイブリッド車両用発電セットを提案しています。ハイブリッド用のためアイドリングをあまり考慮していないのか、上記のSubatmosphericモードを省略しPositive PressureモードとTransatmosphericモードの2つを切り替える構成となっています。ちょうど225kWと75kWのガスタービンが同居したのと同じ性能を発揮します。下の図のようにインタークーラーと熱交換器がかなりかさばりますが、小型ガスタービンの回転が非常に高いため直結される発電機は非常に小型で、発電セット全体としては545kgと小型にまとまります。

 効率は発電端で最大42%と小型ガスタービンとしては異例の高さで高効率のディーゼル発電機に匹敵し、部分負荷時には75kWのモードに遷移できることから下の図のように低出力でも高い効率を維持できるとしています。

 発電用のみでなく機械的駆動にも適用でき、用途に応じてさらに大出力のものも開発可能、ターボチャージャーの製造技術が使えるため低価格という特徴を持つとしています。

 この文章を書いている時点でまだ実際のエンジンの性能試験が行われていないので提案どおりの性能が実現できるか不明ですが、Capstone社と提携したことでj実現の可能性はあるのかもしれません。

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