電気式ガスタービン動車

交流発電直流電動機駆動

 国鉄でガスタービン動車の開発が始まった頃、機械 式以外のもうひと つの選択肢として電気式動力伝達もありました。 この当時すでに一部には軽量電源用途に向けて高速回転の交流発電機 を直結した商品の研究が行われていまし た。 しかし、当時の発電機、整流器では高周波交流発電の効率が低く、商用周波の交流発電機を減速歯車を介してガス タービンで回し、一般的な整流器で直流 化、直流電動機を制御するシステムが主流で、ガスタービンの軽量化の長所が生かし切れない面がありました。 フラン スのTGV001が当時の電気式ガス タービン技術の最高峰といえるもので、電気式を採用した高速ガスタービン列車はこれのみという状況でした。
 国鉄でもキハ391の頓挫以降、70年代後半にかけてこの方式の電気式ガスタービン動車が検討されましたが日の目 を見ることはありませんでした。 内容は鉄道ダイヤ情報別冊のプロトタイプの世界という書籍で紹介されています。

高速回転交流発電機直結+交流電動機VVVF制御

 ガスタービンの本領を発揮させるにはやはりこの技術が必要です。 発電機は高速回転すると非常に小型になりま す。 電気式ディー ゼル機関車の中には2台のエンジンで発電機の回転子と固定子を逆回転させて相対的に2倍の回転数の発電機とすること で小型化に挑んだ例があるほどです。  1500RPMから2000RPM、大型では1000RPMしか回せないディーゼル発電に比べ、一桁回転数の高いガ スタービンはこの用途には魅力的です。  オイルショック以降、省エネ技術が重視され、関連する素材、半導体技術が進歩、軽量高出力の高速回転交流発電機及 び商用周波よりずっと高い周波数の交流 を高効率で制御する技術が実用的となりました。 詳細はALPSプロ ジェクトを参考にしてください。

 この技術を使った電気式ガスタービン動車を設定して機械式と比較してみましょう。 エンジン出力、編成は前項と 同じ3M3T、780kWです。

次の図は引張力と効率分布です。 電気式独特の反比例の曲線で、ガスタービンの最適回転域を多用するため低速運転 でも効率が高く、低出力でも比較的効率が落ちにくいようです。

次の図は加速力の比較です。 直結1段には高速域を除き圧勝といってもいいですが、4段変速には負けます。

電気式の場合、総合的な伝達効率が86%くらいに設定されるようで、出力曲線で見ると機械式よりも6%くらいは不利に設定されるよ うです。 このソフトは技術段階を従来レベルと最新レベルから選択できますが、キハ391当時と比較する関係で従来レベルの低い方を指定して います。 そ のため電気式の効率が現代の水準より低くなっています。

曲線速度向上 1段変速 1段変速
(kg)
4段変速

4段変速
(kg)

電気式

電気式
(kg)

0 5:33:06 1973.35 5:29:58 1810.63 5:30:06 1845.53
20 4:44:43 1890.82 4:41:12 1734.62 4:41:19 1794.98
30 4:28:29 1892.27 4:23:49 1741.79 4:24:54 1807.91

また、編成重量も電気式では機械式1速より9トン重く設定され、運転時分、燃費に悪影響を与えています。 電気式の効率を活かすにはいかに 全体を軽量化するかにかかります。

熱交換器の効果はどうでしょうか。 運転条件が両極端のノンストップと各停で見ると次の表のようになります。

タイプ 1段変速 1段変速
(kg)
4段変速

4段変速
(kg)

電気式

電気式
(kg)

ノンストップ 5:33:16 1176.95 5:29:10 1025.63 5:30:12 1077.44

各停

5:53:13 1291.59 5:44:54 1071.32 5:45:26 1110.98

直結1段ではさすがに各停となると運転時分が伸びますが、4段変速、電気式では低速の高加速が効いて伸びがかなり小さくなっています。 燃 料消費はノンストップと似たような傾向になっています。

キハ391当時にはこのシミュレーションの電気式の性能は得られなかったので時分短縮、燃費削減効果はもう少し悪くなります。 機械式の多 段式変速機を作れなかったのであればやはりキハ391のシンプルな駆動方式が妥当だったということでしょうか。

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