非電化高速鉄道

高速鉄道とは?

 高速鉄道を時速何キロ以上と定義するかは時代とともに変わっています。 昔は160km/hでも高速列車でしたが新幹
線が常識を変えてしまいました。 新幹線誕生をきっかけに200km/hあたりが営業列車としては架線とパンタグラフの接
触集電の制約上一つの境界とされるようになったのです。 フランスのTGV試作車など集電の制約を受けないガスタービ
ン駆動で計画された路線では更に上の速度を目標にしましたがいずれも実用化されず、唯一の非電化高速鉄道と呼べ
る存在がイギリスのHSTでした。
 しばらく停滞していた高速化も集電技術の向上と需要増加で世紀末からまた活発に挑戦されるようになり、今では
300km/hあたりが高速鉄道と呼ぶ目安とも言えるような時代となっています。 
200km/hから250km/hあたりは微妙で高速鉄道技術を持たない地域ではこの領域も高速鉄道、それ以外では准高速鉄
道(semi-highspeedrail)などと読んでいます。 200km/h程度であればディーゼルでも実用的な列車を走らせることがで
きますがそれから上となると一気にハードルが高くなります。

新興国の高速鉄道

 高速鉄道先進国の日本、ヨーロッパ以外の地域でも高速鉄道の欲求は高まりつつあり、今後は電化が採算に合わな
い地域でも再び議論が始まる可能性もあります。 特に自動車・航空先進国のアメリカは高速鉄道では後進国で、福島
の事故後、シェール革命に湧くなか、鉄道で電気運転以外も検討する可能性があります。 ジェットトレイン計画が各地
で話題になっては消えたように潜在的には非電化高速鉄道の需要がある地域です。 シェール革命は中東やロシアの
エネルギー支配を根底から覆す可能性があり、ロシアが天然ガスガスタービン機関車をインドに勧めるのも天然ガスの
販路確保に躍起になっている現れかもしれません。

非電化300km/h運転に挑む

40年以上も昔にすでに318km/hの速度記録を打ち立て、連日のように300km/h超の試運転を繰り返していたTGV試作
車TGV001があったわけで、ガスタービンにとって300km/h運転は容易です。

ミニには標準軌設計の場合、高速運転用軽量編成という選択項目があります。 これはTGVなど空気抵抗を減らす目的
で車体断面を小さくしたものを想定していると思われます。 次の図はアメリカ高速鉄道向けのプレゼン資料です。 新幹
線とTGVの断面図を比較したもので、TGVでは正面投影面積が小さく、空気抵抗低減は容易ですが客室が狭く窮屈で、
輸送効率は落ちるため高速大量輸送需要が見込める地域には不利となります。 一方N700系では抵抗軽減のため先
頭形状から側面、上面すべてを最適化する方向で対応しています。 

では早速設計です。 技術レベルは最先端としガスタービンは熱交換器付きです。 330km/h運転を想定し、電車、ディ
ーゼル動車、ガスタービン動車を作ります。 まず変速機はオーソドックスなものでディーゼルは液体変速+直結1段、
ガスタービンは直結1段とし、1両1500馬力クラスのオールMとします。 高速運転用に小断面軽量車体設定としたため
TGVや新幹線並みかそれ以上の軽量低走行抵抗列車となるはずです。

引張力曲線では比較的差がでませんが加速力曲線では各車の重量差が効いてきます。 さらに在来線をシミュレート
したときよりグラフの右肩下がりは激しく、高速域での空気抵抗の大きさが窺えます。

このソフトの出力では電車が260.4トンとちょうど新幹線の500系なみ、ガスタービンが273トンで電車より重くなっていま
す。
ディーゼル動車では344.4トンとなりかなりの差が出ています。
1500馬力では床下2基エンジン搭載となるでしょうし、力行時間の長さを考えたら耐久性の面から国内の気動車のように小型化できないでし
ょうから妥当な重量でしょう。 一方大型の変圧器を必要とする電車より機械式ガスタービン動車のほうが重く算出されるのには少し疑問を感じます。 機械式での4軸駆動前提で長い推進軸が重いのでしょうか?

 

高速運転用の路線を作成して走らせてみます。次はその運転曲線を俯瞰したものです。

 

330km/hまで電車とガスタービン動車は到達可能ですがディーゼル動車では届きません。 この路線は曲線半径も一部を除き
4000m以上で勾配も部分的に16.7‰が入りますがかなりの平坦直線路線と言えます。 それでも一両1500馬力のオールMでは
330km/h運転にはパワー不足の印象です。
少し拡大するとこうなります。

ディーゼル動車では高速での伸び悩みが目立ち、よほど条件の良い線路を作らない限りディーゼルでの300km/hを超えた営業
運転は厳しいようです。
ガスタービン動車では発車時の遅れが目立ちますが速度が上がると加速力曲線で見たとおり電車に何とかついていっており、
300km/h運転は実用的です。 力行時間比率を比べると余力がわかります。 左から電車、ガスタービン動車、ディーゼル動車
です。

ディーゼル動車では他車と比べ1割以上酷使されることとなります。

運転時分ではこれくらいの差に収まりますが1分の短縮にどれだけの労力がいるかを考えると差は大きい
のかもしれません。

時刻表のような遊びの表示があったので載せておきます。

燃料消費面ではガスタービン動車の1394.48kgに対してディーゼル動車では1354.08kgとわずかの差ですがディーゼルに軍配が
上がります。 これだけ差が小さくなるのはやはり熱交換器の威力ですが、それに加えて軽量性が効いて力行時間が短くなって
いる影響も大きいでしょう。

次は気動車側にも変速機をつけて電車との差を小さくします。ガスタービン動車は4速、ディーゼル動車では5速としてみましょ
う。 加速力曲線はこう変わります。

気動車軍は一気に低速が強くなり中間速度域での落ち込みも減少します。

出だしの悪かったガスタービン動車も途中まで電車を超える加速、ディーゼル動車でも中間速度での加速が向上しているのが
わかります。

ガスタービン動車では1分、ディーゼル動車では2分以上の短縮となっています。

加速性能向上で両者とも力行時間比率が減少、ディーゼル動車では4%以上の低下を達成しています。

燃料消費面ではガスタービン動車の1329.17kgに対してディーゼル動車では1373.42kgとガスタービン動車の逆転勝利となりまし
た。 ガスタービンは減っているのにディーゼルではわずかに増えています。 これはこのような高速運転主体の路線では直結
1段のディーゼルではほとんど液体変速機を使用せず、多段変速機による液体変速機無使用の燃費改善効果がほとんどでな
いのと、加速は悪いもののディーゼルの効率のよい中間回転数を多用したためです。 ちょうど自動車の省エネ運転で高いギ
ヤを使いエンジンをあまり回さないようにするのと同じ効果が出ているのです。
5段変速では加速中まさにガンガンにエンジンを回している状態が続きますので高加速の代償として燃費が悪化したわけです。
一方ガスタービンは回転数と燃料消費量は無関係ですから変速機による加速力改善はそのまま効率改善の効果を発揮するの
です。

次はもっと出力をあげたらどうでしょうか。 安全性や環境問題をあまり気にしない国では400km/hの営業運転すら口にしていま
すが電車やガスタービンならまだ1両あたりの出力を上げる余地は十分あります。 ガスタービンで機械式ならLV-100のような
エンジンなら2基搭載して1両3,000馬力とすることもまんざら夢物語ではないかもしれません。 給排気系の処理に客室面積に
影響は出そうですが。
ディーゼルでは今回の1500馬力クラスでも小断面車体への搭載は無理ではないかと思われます。

電車とガスタービン動車では2000kW、ディーゼルでは多少現実に配慮して少し落として1600kWオールM編成としてみました。
400km/h運転用列車の加速力曲線が次です。

ディーゼルも1両2175馬力と低いのですが一応400km/hまで加速可能です。
同じ線区を走らせてみましたが残念ながら曲線制限のため全列車とも400km/hに達することができません。
最高でも下に表示された区間で電車が370km/h、ガスタービンは360km/h、ディーゼルは320km/h足らず
といったところです。
所々に入る半径2500mの曲線が障害となってこれだけ加速性能のよい列車を想定としてもこの路線では
400km/h出ませんでした。

運転時分ではわずかに短縮といったところ、電車、ガスタービン動車では出力が倍近くになっているのに
これだけしか短縮抱きないのです。

燃料消費面ではガスタービン動車の1796.88kg、ディーゼル動車では1741.04kgと1.3倍ほど増加しています。
わずか数分の短縮のためにこれだけ燃費が悪化するようでは過度な高出力がいかに不経済かが分かる結果です。

そこで曲線通過速度を80km/h緩和してみます。

ディーゼルは出力不足で400km/hに届きませんが電車とガスタービン動車では何箇所か400km/hで
巡航する場面ができます。

運転時分も大きく改善、ディーゼルでも他車との遅れは4分以内となり低出力ながら検討しています。

燃料消費面ではガスタービン動車の1790.72kgに対してディーゼル動車では1720.17kgとなりました。

 

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