第二次大戦中、ドイツ軍が開発したV1号はパルスジェットと呼ばれる間欠燃焼のエンジンを搭載していました。筒の中で燃料と空気を混合し点火、後方から排出して推力を発生するものです。もちろん爆発時には前方の空気取り入れ口方向へ逆流したら推進力は得られないので逆流防止弁が設けられていました。高度な製造技術が必要なタービンがないため当時でも実用できたのです。近年、これと同じ発想でこの爆発で生じる高圧ガスでタービンを回して軸出力を取り出そうとする研究が活発に行われています。
まず構造が単純です。空気取り入れ口と点火プラグのついた爆発管、そしてその排気で駆動されるタービンという構造になります。未燃焼の燃料混合空気が爆発で生じた衝撃波で圧縮されるため、普通の内燃機関のように高圧圧縮空気をあらかじめ用意しておく必要がありません。そのため複雑な圧縮機構が不要で、それに消費されるエネルギーがありません。そのため理論上の効率はガスタービンをしのぐとされています。レシプロエンジンと同様、爆発は間歇的に行われ、毎秒数十回繰り返されます。そのため排気が連続的にならず衝撃波を伴うためタービン効率が低下しますが、多気筒化したり拡散機などノズルを工夫することで解決可能とされています。
2000年に設立されたTurbine Truck Engines社は1984設立のAlpha Engines社が開発したDetonation Cycle Gas Turbineをトラック用に実用化するために発足した会社で、現在540馬力の試作機を開発、試験を行っています。エンジンは上記の原理を応用したもので、基本構造は下の図のような構造となっています。
まず1のブロワーにより取り込まれた空気は2で燃料と混合され3の燃焼室へ導かれます。点火プラグによりここで点火され高温高圧ガスが発生、4のタービンを駆動して排気されます。一方高圧ガスは2の方向へも逆流し、管でつながった反対側の燃焼室の空気を圧縮します。上の図のように空気取り入れ口から燃焼室までの配管の長さに差があるため、送気と爆発のリズムを左右でずらすことで効率よく爆発エネルギーを回収できるようになるのです。
間欠燃焼ですがほぼ完全燃焼に近く排気はクリーンで、ラジエータなど特別な冷却機構は必要とせず、構造が単純なため低コストで維持費も安くできるとしています。ガスタービンほど軽量化はできないようですが試作機で馬力あたり1kg程度を得ており、レシプロエンジン相手であれば十分な競争力を持っています。
まだ詳しい試験結果が公表されていないため実際の性能は不明ですが、現在の同クラスのディーゼルより30%燃料消費量を減らせるとしており、これは熱効率50%程度を意味することになります。もしこれが本当であれば非常に高い効率となり、同社の名前のとおり、トラック用エンジンに採用される可能性が出てくることでしょう。
下の図は最新の試作機で、燃焼室を12個備えています。直径38cmのタービンが6個で3000RPMで540馬力を発生します。、