ハイブリッド「ひだ」

ディーゼルハイブリッド

 高山本線の特急ワイドビューひだにキハ85後継としてハイブリッド気動車が投入されるようです。まだ車両性能の詳しい情報がありませんがここに電動航空機時代のガスタービンハイブリッド技術をぶつけて最新のディーゼルハイブリッド技術と勝負してみましょう。もちろんここからは妄想の世界です。

 まず電気式ディーゼルの現状を見てみましょう。世界的にはMTUがすでに床下搭載のディーゼル発電機やそのハイブリッドシステムを各種用意しています。日立がイギリスに納入した準高速車両も非電化区間直通用にMTUの700kWという大出力のディーゼル発電機を床下に搭載しています。バイモード車両とは言っても電化区間を電車として運転するのが基本ですから3M2Tあるいは5M4Tという編成ですから非電化区間では最高運転速度が135km/hしか出せず、キハ1000程度の走りしかできないようですが、すでにディーゼル技術でも1000馬力級の発電セットを床下に収めることができるようになっています。重量も発電セット全体で7トンを切る状態で、一昔前では考えられない性能です。
https://mtu-online-shop.com/media/files_public/fc1611e088c7812bc4e5ce5aa762c224/3190161_MTU_Rail_SalesProgram.pdf

日立はこれを床下搭載するとき、高さが1m近くあることからかなり苦労したようで、しかも高速列車でもHSTという客車が当然のイギリス人に不快感を与えないように防音防振には相当苦労したようです。
 サイズ的にも重量的にもひだ用ハイブリッド気動車にこれを積むのは厳しそうなので一回り小さい方にします。出力は390kW、高さも上のものより10cm低く、重量も4トン、給排気処理の配管を加えても5トンで済みそうで、狭軌気動車の床下に収まりそうです。トワイライトエクスプレス瑞風がこれをやや上回る発電セットを床下に2台搭載していますが自重が気動車離れしたものになっています。今回の車両はのんびり走る車両でなく高速運転が必要で、できるだけ軸重を軽くしなければなりませんから1台ずつ各車に分散することにします。

 これに対してガスタービンは何を持ってくるかです。現状では車両用発電セットはありません。結局トラックの荷台に乗せて非常用電源としてよく使われているような、ヘリ用ガスタービンを使うしかありません。500馬力クラスを複数使うよりもガスタービン発電セットの小型軽量性を生かして1500馬力クラス1台に集中したほうが燃料消費も少なくなるので3両1ユニットとして考えることにします。現在のT700クラスを想定します。これはアメリカ陸軍などの攻撃ヘリに使われているものですでに古い部類になっており、2025年には次世代機として3000馬力に出力をあげ、効率を25%向上したものに置き換えられる予定で、大量に中古が出ることでしょう。200kgで2000馬力前後の機種が標準のようですが、1500馬力として使用することとします。、エンジン直結発電機が500kgとし、消音器を含む給排気システムを加えて全体で3トンとします。

編成の概要

 発電セット以外はディーゼル、ガスタービン共に共通とします。6両編成でディーゼルは発電機6台、ガスタービンは2台とし、合計で3000馬力に揃えます。電気系は編成あたり300kWhの蓄電池を搭載します。この量は実際に使用可能な量で、寿命の関係でカタログ値としては倍程度の容量のものが必要となります。電動機は烏山線や男鹿線で走っているバッテリー車両と同じ95kWとし各車4台搭載、電力効率は85%とします。エンジン発電機のみで走行する場合は電動機は定格出力での使用となります。しかし、この状態では現行のキハ85冷房時と比べても性能が劣るため、バッテリーからの給電も併用し電動機は電車と同じように加速時には過負荷状態で高加速可能とします。
 電池併用時、電池側から供給可能な電力は600kWとしておきます。不足分は発電機から補います。
 編成全体のうち、電車の部分は特急用設備、蓄電池搭載、小出力電動機などを考慮し積車重量270トンに揃えます。これに発電装置の重量をディーゼル32トン、ガスタービン6トンを加えます。

/////////追記-ひだの試作車発表/////////

 2019年12月、JR東海はひだ用ハイブリッド気動車の試作車を公開しました。このシミュレーションで使用したデータと比較しておきます。

  公開された試作車 シミュレーション用ディーゼルハイブリッド車両
機関 450馬力 500馬力
蓄電池 40kWh 50kWh(実効容量)
主電動機 145kW☓2 95kW☓4
車両重量 38.3t〜42.3t (空車) 50.3t(積車)
起動加速度 2.1km/h/s 2.1km/h/s

機関は現行技術からしても無難な選択のようです。蓄電池はやはり東芝のSCiBが採用されており、このシミュレーションよりかなり容量が少ないようですが、SCiBは深い放電深度を採れるためそれほど差が出ない可能性もあります。
主電動機は永久磁石方式でかなり小出力に見えますがどこまで過負荷運転をするかで状況は変わります。
車両重量は乗客、水、燃料を満載した積車で比較すると今回の試作車のほうが3トン程度軽くなっています。
駆動系を小出力電動機2台に絞り、電池を減らした効果が現れています。
機関単独運転と電池併用過負荷運転の特性データがないためはっきりしませんが、このシミュレーションよりやや性能が落ちる可能性があります。

 それにしても電気式ディーゼルでこれだけの性能を実現できる時代となりました。181系気動車が晩年定格450馬力前後で運転されていたことを考えると、ほぼ同じ定格出力を3トン程度軽量化して達成しているわけで、電気式ディーゼル技術の進歩を示す車両といえます。

/////////追記おわり/////////

編成の性能

 ノッチマンミニでは詳細な車両性能設定ができないためここではスーパーノッチマンを使用します。次の図はスーパーノッチマンの設計機能で作成した編成全体の引張力です。

赤の曲線が電池と発電機併用時のもので、緑は発電機単独で給電された場合のものです。
電池からの給電を併用した場合、電動機は定格の25%増の出力を発生する設定です。

キハ85と加速力を比較してみましょう。
次の図では赤がキハ85です。

発電機単独給電ではやはりキハ85に及びませんが電池併用では実用速度域は完全に凌駕しています。
それにしても電気式ディーゼルでこれだけの性能が実用的に出せるようになったとは驚きです。

次にガスタービンとディーゼルの差を見ましょう。電気式ですから引張力特性は両者とも同じになるため差が出るのは編成重量の差からです。

25パーミルの均衡速度で6km/h、120km/hまで加速するのに要する時間で8秒差といった状態です。

 

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